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2021年06月01日

農林水産省スマート農業実証事業「みちびき」活用による新たなスマート営農ソリューション実証事業が完了

~福島県南相馬市の水稲圃場にて、収量増・作業時間削減を検証~

 株式会社NTT データCCSは、農林水産省「令和元年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」において、株式会社NTT データ、株式会社クニエ、株式会社ハレックス、株式会社AmaterZ、一般社団法人新生福島先端技術振興機構とともにコンソーシアムを構成し、水稲の収量増および作業時間削減の実証を2019 年3 月から2021 年3 月まで実施しました。
 本実証では、福島県南相馬市の株式会社アグリ鶴谷(つるがい)の農場で、福島県の水稲オリジナル品種「天のつぶ」を対象に、AI 技術を用いた追肥時期の判断、AI による病害虫・雑草の同定、みちびき対応ドローンによる肥料・農薬散布、水田水位センサーの利用、営農支援プラットフォーム「あい作®」(以下、「あい作」)を用いた作業管理について検証を行いました。実証の結果、目標としていた収量5%増、農薬・肥料散布、水管理作業にかかる作業時間30%削減を達成し、一定の耕作面積において農家経営に寄与することが確認できました。
 コンソーシアム各社は、今後も水稲をはじめとした日本の農業の課題解決に向けて取り組んでまいります。

背景

 本実証は、就農人口の減少と地球温暖化に伴う気候変動という、日本の農業における2 つの主な課題に着目し、その有効性を検証しました。とりわけ、年々進む地球温暖化は、熟練農業従事者が有する施肥タイミングなどの経験則が通用しないケースや従来その土地ではあまり目立たなかった病害虫の増加など、今までとは異なった課題を引き起こすことが想定されました。
 これらの課題に対応するため、天のつぶ収量5%増、肥料・農薬散布、水管理作業にかかる作業時間30%削減を目標とし、スマート生育診断・追肥、スマート病害虫診断・対処、水位センサー導入による水管理時間の削減、「あい作」を用いた作業管理について、実証を行いました。

実証の概要

・実証課題:「みちびき」活用による新たなスマート営農ソリューション(中山間部における稲作経営対応)
・実証目標:「天のつぶ」収量5%増、農薬・肥料散布、水管理にかかる作業時間の30%削減
・実証期間:2019 年3 月~2021 年3 月
・実証内容と結果:

「みちびき」活用による新たなスマート営農ソリューション

1.スマート生育診断・追肥

<計画>
「天のつぶ」AI 生育診断モデルを作成し、圃場画像からAI により生育ステージを診断し、適切な時期にドローンによる肥料散布を行う。また、分光指数NDVI 撮影(植物の分布状況や活性度を表す指数)をもとに可変施肥(圃場内への肥料の撒き分け)を行い、圃場全体で稲の収量を向上させる。
<結果>
作成したAI を用いた推奨時期の追肥により、2 カ年平均で天のつぶの収量5.2%増を達成した。AI 診断による生育ステージ判定誤差は正解と平均2.0 日差と良好な結果が得られた。また、可変施肥により圃場内の収量内のばらつきを削減できることを確認した。


2.スマート病害虫診断・対処

<計画>
ドローン空撮画像から病害・雑草発生状況の診断、スマホ撮影画像から病害虫・雑草の同定を行う。診断結果からドローンにより農薬散布を行い、被害の拡大を防ぐ。
<結果>
ドローンによる病害と雑草の検知と、圃場で発生した30 種の病害虫・雑草についてスマホで同定ができることを確認した。


3.「みちびき」対応ドローンによる肥料・農薬散布作業時間の削減

<計画>
ドローン運行管制システム「airpalette® UTM」を用いた、「みちびき」ドローンの自動航行による肥料・農薬散布を実施する。みちびきとGPS の精度検証、および、複数台同時航行によるさらなる効率化が可能か確認する。
<結果>
ドローンによる肥料・農薬散布と、動力散布機との作業時間比較で、肥料は33.1%削減、農薬は73.6%削減を達成した。みちびきとGPS の精度検証では、特にマルチパスが発生しやすい悪条件下でGPS より良好な結果が得られた。ドローン2 台および4 台での自動航行の農薬散布を行い、作業時間のさらなる削減ができることを確認した。


4.水位センサー導入による水管理時間の削減

<計画>
水位センサー「tukumo」を圃場全体に設置し水管理に係る作業時間の削減を確認する。
<結果>
水位センサー設置圃場と水位センサー未導入圃場との比較で、見回り稼働の削減により61.6%の作業時間削減を確認した。


5.「あい作」を用いた作業管理

<計画>
栽培計画、栽培計画、連絡相談機能を利用し、実証データの記録・集約を行う。また、生育診断AI・病害虫診断AI、水位センサーとの連携の改善と確認を行う。
<結果>
実証データを「あい作」へ記録し、実証データの集約を実施した。また、営農管理ツールとして、圃場情報の収集が可能な各種センサーや、AI を用いた診断サービス等との連携が有効であることが確認できた。


上記の技術群を用いることで、一定の耕作面積において農家経営に寄与することが確認できた。


コンソーシアム各社の役割・提供技術

コンソーシアム構成員 実証での役割と提供技術
株式会社NTT データ ・実証代表機関として実証プロジェクトを全体統括
・ドローン運行管制システム「airpalette® UTM」の「みちびき」ドローン連携、可変施肥対応にかかる改善・提供 ★
・営農支援プラットフォーム「あい作®」の改善・提供 ★
株式会社NTT データCCS ・AI 生育診断、AI 病害虫・雑草診断におけるAI アルゴリズム開発
株式会社クニエ ・農業経営や先端技術に関するアドバイス
・実証で収集したデータ、生産者の経営データの分析・報告
株式会社ハレックス ・ドローン飛行のための小メッシュ気象データの提供
株式会社AmaterZ ・水位センサー「tukumo」の提供 ★
一般社団法人新生福島先端技術振興機構 ・圃場でのドローン操作や各種データの収集

※★は現在提供中のサービス

今後について

実証を行った各サービス・技術については、実証の成果を生かしてサービス化を目指してまいります。
NTT データCCSは、今後も水稲をはじめとした日本の農業の課題解決に向けて取り組んでまいります。

本件に関するお問合せ

株式会社NTTデータCCS
ビジネスソリューション事業本部 スタートアップ推進室 日置
電話:03-5782-9500
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