地図オーサリング
私たちの生活に欠かせない存在として、さまざまな場所で活用されているデジタル地図。
NTTデータCCSではデジタル地図に関する事業を展開していますが、その中でも最も一般になじみの深い、カーナビゲーションシステム(カーナビ)用の地図データ作成(地図オーサリング)について、ビジネスソリューション事業本部 科学環境システム事業部 システム開発部 課長(当時)の斎藤泰三さんに伺いました。
NTTデータCCSでは、パイオニア株式会社製カーナビ用の海外地図データを15年ほど前から作成しています。それら地図データのベースとなる「元データ」を使って、経路探索・ランドマーク検索やその他追加情報のための各種加工を施し、最適化する作業が「地図オーサリング」です。
事業のスタートは2000年。当初から地図オーサリングにかかわっている斎藤泰三さんは、参入のきっかけをこう語ります。
「パイオニア株式会社のマルチメディアソフト等の企画、制作、販売を担うグループ会社であるインクリメントP株式会社のご担当者から地図データ作成の支援の依頼があり、開始したのですが、非常に難易度の高い業務で、試行錯誤の連続でした。」
では、地図オーサリングの難しさは、どこにあるのでしょうか。
斎藤さんは、データそのものの「量」が圧倒的に多いことを第一に挙げます。地図データは元データから専用プログラムを経てアウトプットされますが、その次のステップとして内容に誤りがないかを確認する作業が発生します。NTTデータCCSでは世界各地の地図データを扱っていますが、そのほとんどは担当者自身は行ったことも、見たこともないエリアの情報。チェック時に用いる各種統計の見方一つとっても非常に専門的な知識が必要となります。ただでさえ膨大なデータが年約10%のペースで増加しているため、それに対応するために「いかに効率よく作業をするか」を常に考え、改善し続ける努力が欠かせません。
次に斎藤さんが挙げたのは扱うデータの「種類」が多いこと。対象となるエリアは世界各地の約10地域で、データフォーマットは3種類。各フォーマットに専用プログラムがあり、それぞれ数百万ステップの作業を経て地図データを作成しています。これらの複雑な専用プログラムを個別に管理することが求められるため、その労力は非常に大きなものとなります。また、アラビア語やタイ語といった特殊な文字を用いるエリアの情報については、チェック作業にもそれだけ高いハードルが課せられることになります。
定期的に更新される元データの内容を過不足なく反映するのはもちろん、その元データ自体に誤りがないかをきちんと確認するのも大切な仕事。決められたスケジュールの中でこれらの課題に真摯に向き合い、ユーザーが安心してナビゲーションを使える品質を実現する──地図オーサリングの仕事に携わるようになってからの15年あまり、斎藤さんのチームは一貫してこの姿勢を保ち続けてきました。
もちろん、最初からすべての課題に対応できていたわけではありません。数多くの試行錯誤を繰り返す中で少しずつノウハウを蓄積しながら、クライアントとの信頼関係を構築してきました。「特にここ6年ほどは、クライアントとの『一体感』を強く感じられるようになってきました」と斎藤さんは話します。「それまではまず仕様書が提示されて、それに沿って作業していたんです。でも、仕様を検討する段階から声をかけていただけるようになってきた。初期段階から私たちがアドバイスできるようになったことで、作業の効率化も進みました」。
多様なリクエストに対して柔軟に対応できるNTTデータCCSの「引き出しの多さ」が、クライアントからの信頼をより強固なものにしました。「他の会社が『契約外だから』と断ってしまうようなご要望にも、きちんと応えられるという事実。これは大きいと思います」。
斎藤さんたちが大切にしてきたのは、常に相手の視点に立って「本当に求められているものは何なのか」を考えること。クライアントとさらなる信頼関係を築き、一体となってより良いサービスをユーザーに届けるため、これからも挑戦は続いていきます。
このインタビューの直後、当社は、インクリメントP株式会社様よりベストパートナー賞を授与されました。 そして、「さらに遠慮なく、どんどん提案してほしい。一緒に成長しましょう。」とのメッセージも頂き、斎藤さんたちへの更なるエールとなりました。